チケットの転売は違法にできるのに、ゲーム機の転売が違法にできない3つの理由

2019/04/08

ゲーム ニュース 質問箱

チケットの転売が違法になるんだってさ

チケット不正転売禁止法ってのが、ついに2019年6月から施行されるらしい。
チケット不正転売禁止法

簡単に言うと「転売禁止って書いてあるチケットを転売したら逮捕やでー」ってコト。

ハイ、券あるよ券あるよー……ってネットでやってるわけだし。

いいね、実にいい。
最初から転売するつもりでチケット買ってる乞食どもが一掃されると思うとスッとするね。

ただ「業として」転売してないと要件満たさないってのが玉に瑕だけど。原価以上で売ったら即要件にしちゃえばいいのにね。

公式に転売サイト用意しなきゃならないのが販売側としては苦しいけど、ニーズがあればそういうネットビジネスが産まれて穴を埋めるだけ。
そこまで高コストを強いることにはならないだろうね。だって使いまわし効くし。作りは簡単だし。

質問されたので

以下の質問を受けたのだけど、twitterの文字数で考えを書くのは短すぎるのでブログに書いてみようかなと。



興行のチケットと物販の違い

Switchね、あったねぇ。ドリキャスやらPS2からからずーっとあるよね、ゲーム機の品薄。
これはしょうがないよね、発売直後だけ爆発的に売れるんだから。


ゲーム機は初動でめちゃ売れてすぐに売れなくなる
引用元:ガベージニュース

リリース直後の爆発的売上に合わせて工場のライン組んでたら即在庫が溢れて赤字倒産だよ。だからまぁ、最初の品切れはある程度やむなし。

で、こういうゲーム機などの転売は今回の法律ではカバーできないんだよね。つまり禁止されてない。

本質はね、どっちも一緒だと俺は思うの。転売目的で買って利ざやを稼ぐというね。
卑しいと俺だって思うよ。できれば禁止した方がいいだろうけども、チケットと物販だと乗り越えないといけない壁が違うから大変かなぁ、難しいかなぁというのが今のところの私の感想。

理由は、大きく分けて3点があると思う。

1点目の障害

チケットとゲーム機の大きな違い

さて問題です。
チケットとゲーム機、何が1番大きく異なるでしょうか?

答えは、チケットは「委託販売」、ゲーム機は「小売販売」であるということ。

つまりチケットは「イベントしてる人が直接売ってる」という形式。
ゲーム機は「小売業者が製造者から購入し、それを消費者に売ってる」という形式。

「小売業」というコト

でさ、たとえばあなたがゲーム機のSwitchをヨドバシカメラで買うとするじゃん。
でもSwitchって任天堂が作ってるじゃん。
てことはさ、ヨドバシカメラは
「任天堂から買って、利ざや乗っけて消費者に売る」
っていう転売行為してるよね。
なんなら任天堂から「転売目的」で大量にSwitch買ってるよね。

だから「利ざや乗っけて業として転売する」という行為そのものを禁止することはできないわけ。

チケット販売店は、そもそも元から利ざや乗っけてないからね。
「このショウ見たけりゃ5000円」
ってイベントやる人が言って、それを買ってるだけだから。なので「チケットを利ざやつけて売る行為」ってのは単純に禁止できるって理屈よね。

でもこう思わない?

「ゲーム機を定価より高く売る行為を違法にすれば良くね?」

でもこれにもやっぱり障壁があってね……。

任天堂だって転売なのでは?

任天堂はCPU作ってないよね。ボタンの部品だって作ってない。どっかの工場で作ったものを買ってきてるだけ。
部品買ってきて組み立てて売ってるだけ。
買ってきたものを組み立てて利ざや乗っけて売ってる。

その理屈でいくと、買ってきたSwitchに何か付加価値を付けたらそれは転売じゃなくて商品なのでは?

たとえば「いい匂いつきSwitch」とか。「かっこいいステッカー(が箱に貼ってある)Switch」とか。
屁理屈なのは分かるけど、商行為としては明確に何か違いがないと片方だけを罰する事ができないやん。

どういう法律の文章にすれば「任天堂はセーフ、ヨドバシカメラもセーフだけど転売ヤーだけアウト」にできるの? という話。
難しいよね、線引きがさ。

というわけで、難しいポイントの1点目。
小売業と転売ヤーの線引きが難しい。

2点目の障害

独占禁止法のからみ

チケットってさ、良く考えたらどこで買っても同じ値段じゃない?
あれは、イベントしてる人が決めた値段で売ってるから。

一方、ゲーム機は価格が一定ではないよね。
アマゾンだといくらだとか、ヨドバシカメラだといくらだとか、楽天だといくらだとか、まぁ価格に差があるよね。





それはなぜでしょう?

答えは、「メーカーが販売価格に口出ししたら違法」だから~。

ボーッと生きおられるのではないですか?

これ、メーカーが販売価格にちょっかい出すと独禁法違反になっちゃうんだよね。

引用元:よくある質問コーナー(独占禁止法) - 公正取引委員会
Q12 メーカーが,販売店の販売価格を指定し,守らない場合に取引を停止することは,独占禁止法に違反しますか。また,新聞や書籍などは定価販売されていますが,これは独占禁止法上問題にならないのですか。
A. 小売業者等に自社商品の販売価格を指示し,これを守らせることを再販売価格維持行為といいます。再販売価格維持行為は,競争手段の重要な要素である価格を拘束するため,原則として禁止されています。また,指定した価格で販売させるために,これに従わない小売業者に経済上の不利益を課したり,出荷を停止することも禁じられています。
「え?んじゃチケットの値段がみんな同じなのおかしくね?独禁法違反じゃね?」
って思うやんか?
それはね、セーフってことになってんだよね。

引用元:興行チケットの委託販売、独占禁止法上問題では? - 教えて!goo
公取委が「流通・取引慣行の関するガイドライン」で
委託販売については再販売価格維持に当たらないと認めていますので

https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/ryutsutorihiki.html

2 再販売価格の拘束(6)を参照してください。

不当な取引とは独禁法上違法な行為を守らせるための手段として行う場合は違法ですが
委託販売が違法でない以上単なる取引拒絶は違法行為ではありません。


この辺は「なんで?」を突き詰めるのは難しかったりするんだけどさ。
まぁ簡単に言えば「はるか昔からそうなってたから、それに倣ってセーフってことにしよう」ってだけ。
あんまり論理的な解はない。

何が言いたいかというと

つまりここで言っておきたい、覚えておいてもらいたいのは「日本では、もとからチケット代はイベントやる側が決めていいけど、ゲーム機は小売価格をメーカーが決めちゃダメ」って事になってたということね。

メーカーは口出しダメなのに警察は口出ししていい?

メーカーがゲーム機の価格に口出ししたらアウト。
だけど警察なら定価を上回っている場合にのみ口出ししていい。

メーカーは品薄が予想される商品について「オープン価格」ではなく「希望小売価格」を設定して売るようにするとして。これ前提。

警察はまずその商品がさっきの屁理屈をクリアできるか(付加価値のない商品かどうか)を判断し、さらに「これは海外版のSwitchだから定価関係ないですよー」とか言われたらウソだと確証を得て、さらに価格が高いって言ってきたヤツがメーカーの人間もしくはメーカーの委託を受けた人間ではないことの確証を得て、ようやく立件できるようになるっていう理屈になりはしないかい?
それってハッキリいって現実的じゃーないよね。大変すぎる。

なので、この辺の独占禁止法と転売禁止法の条文がケンカしないように八方まるくおさめる必要がある。

というわけで、これが理由の2点目。
独占禁止法と整合性とる必要がある。

ちなみに転売禁止法の管轄は文化庁(つまり文部科学省)、独禁法の管轄は公正取引委員会(内閣府の外局)。
この辺に横断的に発言力を持った政治家が本腰を入れないと無理だろうね。

3点目の障害

希少品の価値上昇という当たり前に受け入れられている文化の否定

たとえば希少切手、たとえば稀覯本。
たとえば希少硬貨、たとえば全20種類のアイドルトレーディングカード。
希少なもの、コレクターにとって価値があるものはとんでもないプレミア価格が付いて売られるのが当たり前。
これについては誰も文句いってないし、むしろ当たり前として受け入れられている文化を破壊する法律になるよね。
10円玉(超貴重品)を1000円で売るなんてとんでもない!ってことでしょ?ゲーム機の転売を禁止するってことは。

もっと言ったら「これは間違いなく古伊万里の茶碗です。いい仕事してますねぇ」って言いながらイチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン……なんて価格表示出すことがご法度になるということでしょ。茶碗なんだから当時の売値にインフレ率を考慮した価格でしか売れませんよ、なんてなったら恐ろしい世界だよね。古伊万里の茶碗を2500円で売る、みたいな事になっちゃうワケよ。

どんなに希少性があっても「価格の上乗せ」ができないってことになると、つまりは「価値がつく」ということがあり得ないワケで、希少品が市場に出ることなく捨てられていく事になるよ。
そしたらコレクター涙目すぎるでしょ。

コレクターという趣味を否定するだけに収まらず、日本国内で美術品のオークションなどを開くことは事実上不可能になる。
そしたら原価厨大歓喜だね。

というわけでコレが3つ目の理由。
希少品の価値上昇は世界的に当然の話なのに、その文化を禁止してしまう。

ゲーム機の転売を禁止するのは難しい

結論としてはね、禁止するのは難しい。
ゲーム機だけに絞った法整備をするぐらいしか解決策が浮かばないよ。果たしてそんな事に心血を注ぐ議員がいるだろうか。
また、議員候補者が「ゲーム機の不正転売禁止法に全力を注いでまいります!」って選挙運動したら、受かると思うか?俺は思わんわ。そんな細かい話いらんわ、ってなるやん、ほぼ確実に。

というわけで、政治的に極めて難しい状態だとは思うんだよね。ゲーム機の転売禁止は。

ま、でもゲーム機転売がらみで事件が頻発すれば話は別で、一気に法整備が進むだろうけどね……。
貴重な犠牲が必要だわ。
コラテラル・ダメージ。

コラテラル・ダメージ

チケット転売は禁止できるけど、ゲーム機転売は(誰かが超がんばらないと)禁止できないって事が現状かと思います。残念ながら。

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