ほし | ★★★★★(5/5) |
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寸評 | 舞台はアメリカ、シリコンバレー。技術者が自分の技術力を使ってビジネスのスタートアップするという話。 アメリカIT業界を面白おかしく過剰な程に皮肉っていて、底抜けに笑えるコメディ。皮肉の効かせ方が間違いなく技術者のソレであり、制作陣には間違いなく技術者がいる。 主人公達は己の技術力で勝負したい、けれどもビジネスは技術力以外の部分も必要だ……そんなピュアな技術者の冒険を追体験できる素晴らしいストーリー。そして一般人の視点と近い距離感で描かれるためにその世界への没入感もスゴい。なによりスピーディーな舞台展開と、小気味よいジョークの連発は観る者を飽きさせる事がない。 オタクであれば、このドラマで笑い、怒り、そして泣けることだろう。必ず観るべし。 |
オタクと一言でいいますが
簡単に「オタク」でひとくくりにしてるけど、世の中には星数多の種類のオタクがいるわけですね。鉄道、アイドル、ゲーム、パソコンなどに始まり、果ては着ぐるみ、こけし、マンホールの蓋まで。
そんな数多くの種類がある「オタク」をひとまとめにして語り、しかもそのうちの多くがこのドラマを面白いと感じるはずだと断じているわけだ、この記事は。
そんな乱暴な。
オタクをスーパーの閉店前における惣菜コーナーの唐揚げみたいにひとまとめにして扱うなと。そんな声が聞こえてくるようだね。
いや、そういうつもりではないよと私は静かに言いたいのです。
「オタク」の共通点
そもそもどうしたら「オタク」と評価されるのか?これは簡単に言えば「強いこだわりがある」ことを指して言われることが多いよね。
たとえば健康オタク。
「最近運動不足だからジョギング始めました」
これはオタクとは呼ばれない。
「ジョギングの効果を最大限に高めるため、まずサプリメントを摂り、プロテインを飲みます。次に酸素カプセルに入り全身の筋肉に酸素を行き渡らせます。そして30分走ることで、効果は最大化するのです」
ここまでくるとオタクだろう。
オタクと非オタクの線引きは難しいけど、しかし本人に強いこだわりがあると他人に認められれば立派な「オタク」となる。
そのこだわっているポイントってのは、「自分なりの」こだわりであって、それは結局「本人以外と分かち合うつもりがない領域」とも言いかえられると思うのね。
その領域の有無が「ライト層」と「オタク層」の違いと、まぁそう定義づけても大ハズシではないかなと。
そこがオタクの「共通点」なんだろうと思うワケ。
その共通点を持つと……
オタクが「自分なりのこだわり」を持つとどうなるか。そのこだわりを理解しない人間たちとの間に溝ができるんですねぇ。
なんと不寛容なこの世界!
嘆いてみてもはじまらないのです。オタクは、自らのこだわりのために周囲から一定の距離を取られ、孤立し、そして疎んじられていくワケですなー。
そんなティピカルな「オタク像」は、しかしながらこのドラマの主人公たちとも重なっていくワケです。
主人公たちのこだわり
ただのオタクのこだわりは金にならないけど、このドラマの主人公たちのこだわりは金になる。そこが大きな違いではあるんだけども、しかしそれはオタク達の究極理想でもあるとは思うんだよね。「○○オタク」な人が、結局「○○」というジャンルでお金を生み出すようになる、生業にするってのはさ、やっぱオタク的には羨ましいなと思うよ。
で、この物語の主人公は自分の技術を1000万ドルで売っぱらう事もできたのに、それを蹴って「自分の会社」で「自分のビジネス」をする事を選ぶわけ。
これは「夢を追った」というだけじゃなくて、すこぶるオタッキーな思いが詰め込まれた選択なんだと俺は思うのよ。
あらすじ
散々いろいろ語った後にあらすじ書くのもアレだけど。パソコンオタクでコーディング好きが高じてエンジニアになった主人公。
主人公の考えたしょーもないウェブサービスは、どう考えてもビジネスにはならないのだけれど、そのサービスのために作り出した圧縮アルゴリズムが実に素晴らしかった。
そのアルゴリズムを1000万ドルで売ってくれというオファーまで受けるに至る。
悩みに悩んで、しかし主人公は金を受け取るのをやめ、このアルゴリズムで自分のビジネスをやろうと決意する。
自分の生み出したアルゴリズムとは「強いこだわり」の産物
このタイミングであらすじを語りだしたけど、要するに前段で語ってた「オタク」とこのドラマとのつながりを説明したかったの。コーダーが自信をもって送り出すアルゴリズムは、それこそ「こだわり」の塊であって、「オタク」の持つ「こだわり」と大差ないと思うんだよ。
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見るからにオタクな主人公の皆さん |
好きなアイドルの仕事に憤慨するように。
自分の持っていないゲームハードにやたらと敵対心を抱くように。
自分のこだわりポイントをぞんざいに扱われるなんて許せない! という強い思いがそこから感じられるんだよね。だからこそオタク的には主人公の「オタクならでは」な選択を応援してしまうというか。
オタクならば、主人公を応援しないではおられないと思うんだよね。
コメディとしても最高にくだらなくて面白い
IT業界のパロディをふんだんに取り入れた最高にくだらないストーリー展開も魅力的。IT界の巨人がすごい変人だったり、強欲なCEOがいたり、うさんくさいベンチャーキャピタル、過去のIT業界での成功で大金を手に入れた最高にイヤなやつ、などなど……。「あれ、もしかして現実でいったらコイツがモデルなのかな?」みたいなニュアンスをそこかしこに感じ取ることができて、実にいい。
これがまぁ小気味いいテンポで毎回毎回ぶち込まれているんですわ。
もう一度見始めると「停止」を押すのがツラい。
めちゃくちゃ面白いんで、あなたが何かのオタクであれば是非観て欲しいなぁと思うワケでありんす。
「シリコンバレー (字幕版)」は Amazon Prime Video で観られる模様

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