一言で表すなら「竜頭蛇尾」。
2話までは最高にワクワクして楽しめる。しかし3話~7話は、猛烈なガッカリ展開が繰り広げられる。
演出、演技、セリフ回しに一定の魅力があり、当初の脚本も良かっただけに落差がひどすぎる。普通につまらない以上にイライラさせられる。
Netflixドラマ「地面師たち」を観ましたよ。このドラマ、かなり好評らしいですなぁ。いろいろなところでミームを目にするぐらいに。
でもこのドラマ、めちゃくちゃ竜頭蛇尾。最初だけすんごい面白くって、そっから先はグッダグダ。なんで実際に起きた犯罪というモデルがあるのに、ここまでひどいストーリー展開になってしまったのか……。
3話から7話(最終話)は、ただのパワー系反社の意味不明な殺人ショーなんだよね。脚本家は罪深い。
つまらなさの原因は、ただ1点。「知性ゼロの知能犯」という矛盾のため。具体的に、どのようにハリソン(主犯)の知性がゼロなのかを語っていこうかなと。
「地面師」という設定が台無し
「地面師」ってさ、知能犯であるべきじゃん。銀行強盗とか誘拐とかじゃないんだからさ。
なのにさ、このドラマではあまりに安易に、次々と人が殺されるのよ。もうそんなの知能犯じゃねぇよ!
そりゃね、どうしてもやむにやまれず、避けられない殺人が発生するならまだしもよ。それぐらいなら許容できるよ。
でもさ、あんなにもバンバン人を殺されちゃーさぁ。全然知性感じられないよね。
そんなに簡単に人を殺して回れるなら、そもそも地面師詐欺をせずに他の犯罪で金稼ぎしてください。
仲間であるはずの不動産ブローカーを殺す?
「ターゲットを探すのに利用した不動産ブローカー」を殺すんですよ。ターゲット探ししてくれる、いわば仲間ですよ? それ殺したら、次の詐欺のターゲットを探すときに、協力者が減ってしまうじゃないですか。他のブローカー見つけて、またそいつも殺すんですか? そもそも、関わったら殺されるってのが界隈でウワサになったら誰も協力してくれなくなるでしょ。
こんな狂人に、ピエール瀧だとか小池栄子だとか、その辺の仲間が平気で付いていくはずもないでしょ。「次は自分だ」って考えるのが当然じゃん。そしたら詐欺なんて成立させられないって。少し相手の立場に立って考えてみてほしいもんだよ。
もう観てる方は萎え萎えよね、この無理な脚本。
まさかまさかの警官殺し
それに、なにとトチ狂ったのか捜査二課の刑事を殺すんですよ。
えぇ……?
ただの殺人ではなくて、警官殺しですよ?
たまったま担当刑事が情報を誰にも共有しておらず、ハリソンがマークされていることを誰も知らない設定だったけども、それって極めてご都合主義的脚本でしょう。だって、情報が共有されていない可能性の方がどう考えても低いじゃん。
しかもそれが、すげーかるーく自殺として処理されるの。もうね、観てる方は萎え萎え。
ヤク中のメンバー(竹下)も殺す
取り分を増やせと言ってきたヤク中の詐欺仲間(竹下)も、結局殺すんですよ。いや、まぁね、これは何となく筋が通ってるからいいかなーとも思えるよ。殺人がこの一件だけならね。
だけどさ、もうすでに二人殺してて、そこにきて仲間も殺すんでしょ。
どう考えたって、他の仲間が手を引いて逃げ出すでしょ。やっぱり観てる方は萎え萎え。
結局、詐欺が成功した後に他の仲間も殺す
後藤と麗子に至っちゃ、特になんの理由もなく殺される。もうね、意味わかんないでしょ。
「前々から一緒に仕事をしてきた」というストーリーが語られていたのに、突然殺しちゃうんだもん。
112億円手に入ったから、もう過去を清算したってことなのかもしれんが、だとしたら主人公であるところの辻本を殺さない意味がわからない。辻本も殺して、さらに言えばハリソンが殺しを依頼した殺し屋連中も殺して、それでようやく精算でしょ。だって、「情報もらっただけの不動産ブローカー」「自分を疑っている刑事」「詐欺仲間」は殺すのに「殺しを依頼した相手」を殺さないなんて理由なくない?
殺し屋を殺さないなら、そもそも詐欺仲間も殺すことなくない?
だって、仮に彼らが捕まってハリソンが主犯であると自白したところで、結局逮捕につながるような情報が出なければいいんでしょ?
だったら、最初から仲間に必要以上の情報を渡さなければいいだけだよね。
というか、辻本殺せよ。
極めつけは、詐欺の被害者を殺す
私はテレビ画面を見つめながら、ただ
「は?」
という感想しか出てこなかったよ。マジでなんのためか分からない。意味不明すぎる。
それだけ殺して、まんまと逃げおおせるワケないだろ
だいたい、なんだよ。あの最後の爆破。あれでハリソンが生き残る意味が分からないだろ。というか、ストーリー上ハリソンが逃げる展開にするんだったら、もっと知的な感じで逃げるべきでしょ。最後の最後まで知能犯ではなくて、ハリウッド映画の悪役だったじゃん。
どかーん、ばこーん、ふっふっふ、死んだと思っていたのか。私はまだ生きていたのだ……!
やっす!令和の時代に、めちゃくちゃ安い演出!
ドラマ界にも、ついに円安時代が到来かっつーの。1ドル162円かっつーの。安すぎるわ。
いや、演出面だけの問題でなくね、ストーリーの合理性としても疑問が残るよね。
仮にね、仮にあれで生き残ったとしてだよ。無事に海外逃亡できるってすごくね?
あれだけ世間を騒がした事件、あれだけの殺人をした犯人ですよ。それを治療する闇医者がいて、偽造パスポートを作るか密航させてくれる業者がいて、しかも彼の手にした金はロンダリング後に日本国内に持ち込めて、海外逃亡したときには海外にも持ち出せている、っていうね。
ご都合主義すぎるんじゃ?
関わる者みな殺してなければ、そういう筋で逃げることもできるだろうけどね。
殺してまわる狂人だったからね。逃げられるワケないじゃんって。
まとめ
全体を振り返ると「『知能犯』を自称する狂人が、周りの人を殺してまわるだけの駄作」という印象しか残らない。
ハリソンから、まったく知性が感じられない。知性の感じられない知能犯が魅力的になるわけがなく、ドラマ「地面師たち」は根本から矛盾する駄作になりさがっている。
いやー、全体的に頑張って作ろうという心意気は感じられたんだけどねぇ。雰囲気はとても良かった。
演出、演技、セリフ回し、どれも良かった。とても使い勝手が良さそうな、印象に残るセリフも大好き。
「もうええでしょう」
「最もフィジカルで、うんたらかんたら」(最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュ)
観ていて惹きつけられる要素はあったんだけどなぁ。
でも、グッダグダの竜頭蛇尾な脚本のせいで台無し。惜しかった。
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