【後編】妻が臨月なのに緊張感ゼロだった男の末路

2019/02/26

子育て

t f B! P L
息子の足

この話は以下エントリからの続きのお話です。

息子の足
無事に産まれて良かったよかった

ついに完結!

時刻 00:10(電話から2:10、到着から 60 分)

看護師が目を丸くして言う。

いやぁー、奥さんすごい!本当にすごい!

どうやら陣痛から分娩直前までが余りにもスムーズで、感心しきりらしい。
スムーズな事を褒められても、実のところなんのプラスもない。
嫁さんはただただ痛いし、俺はただただ手持ち無沙汰だ。

でもスムーズということは早く分娩が終わる可能性があるということでもあるわけだね。
つまり朝までかからずに帰れるかもしれないと。
いや、そんな事を考えるのは後ろめたいなぁという気持ちはあったよ。だけど大して助けにもならないって事と、長時間拘束される事とを、ついつい比較してしまうでしょうよ。ちらっとよぎるぐらい仕方がないでしょうよ。

そんな私の葛藤を後目に、看護師があいも変わらず
イヤースゴイオクサンスゴイ
と鳴きながらテキパキと準備を進める。

医者もようやく本気になってメスなんか取り出しちゃってる。

あー、ホントに産まれるんだー。
すごいなー、確かに。俺が病院着いてから1時間余りで産まれてしまうよ。
奥さんスゴイスゴイって言いたくなる気持ちも分かる。

時刻 00:15(電話から2:15、到着から 65 分)

医者が本気を出してから10分程度で分娩は完了。
血がドバドバ出てるらしいが、それは見ないように言われる。
看護師曰く
血の量を見て倒れる旦那さんが結構いるからね。赤ちゃんで大変なのに大人の相手までできないからね!
とのこと。

冗談とも本気ともつかないトーンで言われたので、ビビってしまって血を見るのを極力避けて歩くハメになった。
誰だって新生児の真横で気絶して倒れたくない。

看護師がハイテンションで
無事産まれましたよぉー!
と赤ん坊を持ってくる。
なんの実感も湧かない。余りにも心に感情の抑揚が無くて、自分でびっくりする。
さすがに我が子の誕生に立ち会えば、それはそれは感動して涙の1つでも流れようかと思っていたのだけれど、そうはならなかった。
現実とは得てしてそういうもんだ。

子供がかわいいかどうかより、嫁さんが大丈夫かどうかが気がかりでしょうがない。
脳の血管切れてたりして緊急搬送とかされたらどうしようとか、しばらく心配だった。

それなのに
はい、お父さんこっちで新生児の体重測ってください!
とか言われて、正直心の中で
oO(そっちでやっとけよ)
と思うが、出産直後の嫁さんにバッドなイメージを植え付けて後に禍根を残すのも嫌なので言われた通りにする。もちろん、ニコニコしながら。

お父さん的な所用は、まず
こちらに来てください、元気な男の子ですよ~
から始まり
はい、お母さん抱っこしましょうね(の写真撮影係)
と続き、さらに
あちらで体重計りますので
となって、
体重○○グラムですね!
……へぇー
お父さん、写真!
え?あ、これを?(体重計を指さしながら)
はい!
パシャ、となっていった。

新生児の体重計
こんなの撮らせてどうしようというのか……
嫁さんが気になっているんだが。
この子も頑張っただろうが、嫁さんが何倍も頑張ったと思うのだが。

まぁいい、ルーチンワークだ。作り笑いでこの場を流そう。

やがて夫婦だけになる

時刻 00:30(電話から2:30、到着から 80 分)

赤ん坊はルーチンワークが終わったら看護師に取り上げられた。
赤ちゃんとお母さんは一緒にいるわけじゃないんだって!知らなかったよ。
徐々に慣らしていくんだそうな。

お産が終わると医者はさっさと立ち去り、看護師は子供を何かと処理しているようだ。
しばらく待っていてください、と言われて夫婦だけで分娩室で待たされる。

嫁さんを労い、全然できなかったおでこの汗を拭くってやつを、改めてやり直す。

大変だったねぇ、頑張ったねぇ。
何度となく口をついて、同じ言葉だけが出てきた。語彙力の喪失である。
お腹がペタンコになったねぇ!なんて話ながら時間が流れるに任せていた。

しかし遅い。
看護師は帰ってこない。
もう0:45になろうとしてるんだが。

嫁さんが「もう帰っていいよ」と優しいんだか優しくないんだ分からない言葉を僕にかける。
いや、こちらを気遣っての言葉ですよ、100%理解してますよ、大丈夫です。

「ちょっと声かけてみようか」
分娩室の扉に手をかける。

ガタンっ

鍵がかけられている、外から……。

なぜだ。なぜ外から鍵をかける必要がある。
そもそも外から鍵をかけたくなるシチュエーションとはなんだ。なんのためにこの病院は、こんな装備になっているんだ。

閉じ込められたってヤツなのでは……

ともかくこれでは帰れない。
また世間の「普通」が分からなくなった。
「普通、未明に分娩したら朝までお父さんが付きそうよね!?」
ってことなんだろうか?
いやいや、俺が寝るところが無いだろそもそも。
帰る。帰りたい。まだ今なら寝て起きて仕事に行ける時間だ。

ふと見ると、隣の分娩室と繋がっていた。
通常なら関係者しか通らないだろう通路があって、どうやら歩いて行き来できるようだ。
こんな深夜で、分娩している人が2人とおらず良かった。いや、ものすごく静かに分娩しているだけで隣にいるかもしれないのだが。
仮に分娩している所に珍入なんて事になったらもう病院あげての大騒ぎになってしまう。
徹底した寡黙な妊婦がいない事を祈って、隣の部屋に躍り込む。
まさか本当にいるとは。寡黙な妊婦が。

ウソである。さすがにいるわけない、そんな人。
隣の部屋に出るとそこには空いているベッドがあり、眠さについつい横になりそうになる。仮にそんなことしたら、シュワちゃんでもないのに妊娠したのかと思われて、お腹にゼリー状のなんかを塗りたくられてエコー検査されてしまう。
そんな事をされたら、必死で税関をくぐり抜けてきたこのお腹の中のアレがバレてしまうではないか。それは良くないので、寝るのは我慢しよう。

腹腔内に薬物を隠しているとは思えない冷静な判断をした僕は、冷静ついでに考えた。
「こっちの部屋も鍵かかってたらどうしよう」
苦笑いしながら扉に手をかける。

力を込める。

スッ……。

音もなく扉は開いた。
幸い施錠されていなかったようだ。
よかった、これで帰れる。

入ってくる時も出ていく時も能天気

外から嫁さんの部屋の鍵を開けて「んじゃ帰るわ」と一声かけて出ていく。
改めて言うが、なんとも無感動なお父さんである。
「立ち会った方がいい、感動するから」
と幾人かに言われたが、正直感動は無かった。ただただ嫁さんにご苦労さまと言いたくなるだけ。

その辺歩いてる看護師を捕まえて「それじゃ僕帰りますんで」とひと声かけて出ていく。
私のことをさぞやおかしな男だと思ったことだろう。思いやりのない男だと思ったことだろう。
でも嫁さんと話し合って決めたことだから。俺だけの考えじゃないから。

颯爽と夜の闇に消えていく男……

その背中はどこか物悲しかった……

夜風冷たい1:00の横浜、颯爽と自分の車に乗り込む私。
ドアをバタムと締めて。
アスファルト、タイヤを切りつけながら、暗闇走り抜けるところです、ちょうど今ね。

駐車場の出口バーで立ち往生。

地下駐車場のバーが上がらないんだよね
地下駐車場のバーが上がらないんだよね

「あ、小銭ねぇや」
その駐車場、小銭しか受け付けなかったのである。
自動販売機はあるか見回す。何もない。
事前精算機の光が見えた。車のエンジンをかけたまま、降りて歩み寄る。どうせ他には誰もいない。

事前精算機はあった。
だが、その精算機に至るまでの自動ドアが施錠されている。
なんなんだ一体! 中に事前精算機を置いたやつに問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。

アスファルト、タイヤを切りつけながら駐車場をぐるり1周、である。
そんな歌詞ならさすがに Get wild というタイトルは付けられなかっただろう、みみっち過ぎて。

もう一度駐車場スペースに停め、自動販売機を求めて病院の中に。

その背中が物悲しい理由は駐車代が払えないからだった

ふと目に止まる「深夜付添の方は夜間受付で駐車券を発行してください」との文言。
えっ、付き添いでも駐車券でるのか?

おそるおそる夜間受付にいるゴツいおにーちゃんに話しかける
「……あ、あのぅー…駐車券の……」
「あー、本当は担当のフロアで出してもらうんですけどねぇ、いいですよ。ここで出しますから待ってください」
なんてイイヤツ。

もはやあのフロアではすでに噂が駆け巡り、すべての看護師から「全女性の敵」みたいな目を向けられるに違いない。
そんな中で「あのぅ……駐車券を……」とでも言おうものならば、周りをぐるりと取り囲まれ針のむしろ状態になることは必定。
「あんたみたいな男がいるから女性の地位向上が果たせない」
とか
「駐車券の方が妻子より大事なんでしょう!」
などの面罵の言葉を浴びせられながらの駐車券発行となるのは想像に難くない。

夜間受付のゴツいにーちゃんのおかげで男性としての尊厳をなんとか保つことができた。ありがとう。

やがて退院

嵐のように 1 週間は過ぎ去っていく

嫁さんは結局 1 週間入院ということに。
最初は子供と過ごす時間は限定的だったものが、そのうち 24H 一緒にいられるように段階的に子供と接する機会が増えていくらしい。
私が普段と変わらず仕事している間に嫁さんは着実にそういう訓練をやらされ、ぽーんと退院させられるらしい。平日に。
退院のお迎えは嫁さんの母親に行ってもらった。平日だからね。

ほら、もう絶対あの病棟では俺はクズ男の代表例みたいなカンジで受け取られているに決まっているじゃん。
出産の立ち合いにも中々来ないわ、産んだらすぐ帰るわ、しかも退院のお迎えにも来ないんですよ。

まぁね、うん、妻が臨月だっていうのに何の心の備えもしていなかった夫ですからね、致し方なしでしょう。
たださ、どんだけ準備してたって産んだらすぐ帰るし、平日に迎えには来ないけどな!

プロローグ

「平日に迎えには来ないけどな!」っと…。
よし適当な感じでシメて終わりだな

いや有給とれよ


普通に言われた。今になって。もう 1 年が経とうとしているというのに。
ちなみに冒頭の足の写真はこのストーリーの中で生まれた子の足でございます。
この時はまだ 1 か月だったなぁ……。

もう今となっては 1 歳になろうとしており、だいぶ大きくなりました。
とか言いながら写真貼り付けてみたりしてね。こういうので子供やら自分の写真貼り付けるの、あんま好きじゃないんだけどさ、子供が絡むとね、ついついやりたくなっちゃうもんなんだよね。
「ったく誰がおめぇの子供の写真見たいってんだよアホかよ」
って思うのもごもっともなんだけども、でもほら、この 3 部作のある意味主人公だったわけで、この話の時だけは子供の写真はっつけても文句言われないかなってね、思うよね? そうだよね?
だから貼る~、貼っちゃう~。

すっかりわんぱく坊主の顔
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父の腹の上でくつろぐ姿を観測
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